千葉県房総半島にある小さな港町Y町にあるS大学。客船や貨物船といった商業船舶の乗組員のうちで、船長クラスの人材を育成するための大学である。工学部および理学部からなり、船舶工学科、海洋工学科、船舶物理学科などの学科をもつ理科系の大学である。男子のみ入学できること、そして、全寮制であることもこの4年制大学の特徴である。一学年の学生数は約50人で、全学年約200人の学生が、大学構内の北寮、南寮に分かれて生活をしている。
1980年4月、 S大学理学部に現役で合格した藤沢大志は、S大学北寮の1年生として、大学生活をスタートすることになった。大志は、身長175cm、色白でヒョロリとした体型。出身高校は、東京にある6年一貫教育の男子進学校・開明学園で、高校時代は、学業は並、スポーツは何でも器用にこなす方だったが、運動部には入らず、部活は天文部であった。
実家では、一人っ子で、甘やかされて育てられ、小学校以来、受験勉強中心の生活で、バイトの経験すらない、「温室育ちのお坊ちゃま」だ。また、甘いルックスでなかなかのイケメンである大志だが、6年一貫男子校出身者の例に違わず、特定のガールフレンドはおらず、もちろん、いまだ童貞であった・・・
高校時代に読んだとある小説の影響で、船の上から南十字星をみたいと船乗りに憧れ、両親の反対を押し切ってS大学の門を叩いた。全寮制というのに惹かれたのも事実だ。一人っ子の大志にとって、兄弟とくに兄貴がほしいという願望は非常につよいものだったからである。
入学式の前日、すでに寮での部屋割りは決まっており、同部屋となる3年生の田中太朗先輩に連れられて、生協建物の2階にある理容店「アンカー」で、スポーツ刈りにしてもらう。
大志にとって生まれて初めてのスポーツ刈り。「似わねぇ〜!」が鏡に映る自分のスポーツ刈り姿をみたときの感想であった。3ミリから6ミリの短い頭に刈り込むのが、寮の規則であり、S大北寮生は、就職活動をする4年生以外は全員この髪型であった。
スポーツ刈りの次は、生協被服売店で制服、実習服、体育キットを受け取る。制服は、紺の詰襟に紺の制帽。儀式やパーティのとき正装として着用し、平日の外出時も制服着用が義務づけられていた。講義は、一般大学の学生と同じく私服で受けることが許可されていたが、一部の実習などでは、白の作業服と作業ズボンそして白の帽子という実習服を着用することになっていた。作業服の左胸には名前が刺繍されていた。
「明日の入学式は、制服着用だからな、わすれるなよ。」と田中先輩。
藤沢大志と同部屋になるのは、2年生の宮元進先輩、3年生の田中太朗先輩、そして、4年生の山田勝昭先輩だ。各学年から一人ずつ、4人一部屋で4年間の寮生活をすごすのが、S大学の伝統であった。
4年生は部屋長と呼ばれていた。年の違う者同士が狭い生活空間を共有することで、将来遠洋航海に出たときに船員として身につけておかなければならない最低限のルールを学んでいくのだ。
全員、思ったよりやさしそうな先輩だったので、大志としては一安心だった。それに、3人とも、 スポーツ刈りで浅黒く日焼けしており、笑うと白い歯が印象的で、まさに海の男といった感じであった。こんなに格好のいい「兄貴」たちと、同じ部屋で生活するなんて考えただけでも、胸が高鳴る大志。一方で、「みんな、格好いいよなぁ〜。俺も、あんな風になれるのかなぁ?」とやや不安にもなる。
寮は、中庭をはさみ、二棟の建物が、船の左舷、右舷にみたてて建っていた。一方が北寮で、もう一方が南寮である。
理学部の学生は北寮に、工学部の学生は南寮に、振り分けられていた。二棟とも、4階建で、1階に通称「寮食」と呼ばれる食堂、風呂場、 洗濯場、医務室、宿直室などがあり、2〜4階は居住区と呼ばれていて学生たちの部屋があった。便所は各階にあり、宿直室には、当直と呼ばれる4年生2人が、順番に寝泊りしていた。冷暖房は、食堂、医務室、宿直室にのみついており、各部屋は、スチームのみが暖房としてついていた。
入学式前日の夕方、寮の部屋で、大志は、4年生の山田勝昭先輩から、寮の規則について教えてもらった。各部屋での禁煙、禁酒、寮内での賭け事の禁止、平日の制服での外出義務付け、そして、午後10時の門限などである。その他、部屋の中で守らなければならない最低限のエチケットがいくつかあり、最後に、山田先輩が、
「ベットのなかでエロ本でもなんでも見るのは自由だが、センズリは便所でな!あ、それから、いい写真集あったら、隠さずおれにも見せろよ!」
とニヤニヤしながら、その太い腕で大志の背中をバンと叩いた。ハンサムで精悍な山田先輩の口から「エロ本」とか「センズリ」なんて言葉がいきなり出てきて、大志は、真っ赤な顔をして「はい、先輩」と答えることしかできなかった。
部屋には、山小屋にあるような備え付けの二段ベットが二組と机が4つあった。ベットは、1・2年が下段で、3・4年が上段となるのが通例で、ベットはカーテンで仕切られていた。ベット内のわずかな空間が、寮内で唯一プライバシーを保てる場所であった。大志のベットは、山田先輩のすぐ下であった。
先輩の説明がおわり、自分のベットに寝そべってくつろいでいると、山田先輩が「藤沢、俺と一緒に風呂行かねぇ〜か?」とカーテンの向こうから誘ってくれた。
大志は、その晩は、緊張と疲労のため、最初は断った。しかし、「せっかく誘ってくれたんだから、行かないとマズイかな?」と思い、とりあえず、着替えをもって、ベットから起き上がり廊下に出てみた。
廊下に出た大志は、上級生の何人かが、まさにスッポンポンの状態で、廊下を闊歩している姿をみてしまう。大志は、なにか見てはいけないものを見てしまったのではないかと思い、顔を真っ赤にして、逃げるようにすぐさま部屋に戻ると、自分のベットの中へと入り込んてしまうのだった。
その時は、まだ、先輩たちが、全裸で廊下を歩いている理由がわからず、ただドキドキする胸を押さえるだけだった。そして、いまさっき目にした光景を思い出して、大志の股間のイチモツは、熱く硬くなっていたのだった。
(2024・6 追加シーン)
大志に誘いを断られた山田先輩は、独りで寮1Fの風呂場へと向かう。
「チェッ・・・ふられちまったぜ・・・アイツ、まさか恥ずかしがってるんじゃねーだろうな・・・男子校出身とか言ってたから、絶対、ついてくると思ったんだがな・・・」
そんな山田に、隣部屋202号室の4年生・岩本が後ろから追い越しざま、
「よぉ!お前ひとりかよ?お前んとこの新入りはこねぇのか?」
と声をかけてくる。
「ま、まあな・・・『お客様』が風呂いきませんっていえば、そうするしかねーだろ・・・」
と山田。
「おまえは、後輩に甘いなぁ・・・俺のとこなんて、みろよ・・・フフフ」
岩本は、いたずらっぽい笑みを浮かべて、岩本の右脇やや後方にいる1年生の方を見ろといわんばかりに、山田に目配せをする。
「いっ、痛い・・・せ、先輩、そんなひっぱらないでくださいよ・・・チンコ、きれちゃいますよ・・・」
「ワハハハ、部屋長の俺にそういう口をきけるのも、おまえが『お客様』でいられる、今夜だけだからな!ワハハハハ!」
山田が横をみると、岩本は、右手で、岩本の部屋の1年生と思われる学生の股間のイチモツをギュッと握って、その学生を引っ張るようにして右脇に連れているのだった。その二人の光景に思わず苦笑いする山田。その1年生と思われる学生の股間のイチモツは、岩本の右手のひらの中で相当揉まれ引っ張られたりしたらしく、ビンビンに怒張していた。
「そいつが、お前の部屋の新入りか?」
「ああ、川原だ・・・おっと、自己紹介は明日だったな・・・じゃあ、山田、先に失敬するぜ・・・せいぜい新入りにナメられんように気をつけろよ!」
と岩本は山田に言うと、川原の股間のイチモツをさらに強烈にグッと握り、
「おお、元気がでてきたじゃねぇーか!それでこそ俺の部屋の新入りだ!さあ、俺についてこい!おまえが迷子にならないように、風呂が1階のどこにあるかを教えてやる!1階なんだから1回でおぼえろよ!」
と言う。
「せ、先輩、い、いまのシャレっすか?」
「うるせぇ!くだらんこときいてるまえに、笑わんかい!!」
「ハ、ハハ・・・あんまし、おもしろくないような・・・」
「なんだと!」
ギュ!ギュゥ〜〜〜〜〜!
「いっ、痛いって・・・だ、だから、そんなに強く引っ張ったらチンコきれちゃうって・・・そんなににぎらなくても、オレ、にげませんから・・・」
と、真っ赤な顔で口をとんがらせる川原。
「いや、あやしいな・・・去年は、フリチンのまま初日に脱走した新入りがいたからな・・・『お客様』に逃げられちゃ、部屋長としてメンツ丸つぶれだからな・・・しっかり、ここをつかんでおかないとな!」
ギュ!ギュゥ!
「いっ、痛てぇ!!」
そんな悲鳴をあげる1年生・川原も4年生の岩本と同様、生まれたままの姿で風呂場に向かっている。202号室の1年生の川原のケツには、すでに、真っ赤な手のひらの痕が色濃くいくつもついていたのだった。それをみて、山田は思わず吹き出しそうになる。
「岩本のヤツ・・・さすがに手がはえーな・・・」
そういいながら、ニヤニヤしている山田も、もちろん、生まれたままの姿だ。それがS大の伝統だったのである。
(2024・6 追加シーン以上)
各自の寮で、「お客様」として、初めての一夜をすごした大志たち1年生は、翌日の午前中、大学講堂での入学式に出席した。講堂の舞台の一番近いところが1年生の席で、その後ろに上級生たちが座る。2階席が1年生の父兄たちの席だった。
1年生の様子をみると、高校3年間運動部でみっちり鍛えられたバリバリの体育会系といった顔立ちの学生はむしろ少数派で、どちらかというと大志と同じ色白でお坊ちゃまタイプの学生が大多数だった。
お世辞にも制服は似合うとは言えず、後方に座っている日焼けして逞しく見える上級生たちと比べると、まだまだ、モヤシっ子といった感じで、どこか頼りのない感じの新入生ばかりだった。大志の属する理学部よりも、若干、スポーツマンタイプの学生が多そうにみえる工学部の1年生たちも、似たり寄ったりであった。大志も自分と同じようなタイプの奴らばかりで、内心はホッと安心するのだった。